今から数年前のことです。気持ちの良い青空が広がる日でした。園庭には、子どもたちが自分たちで蒔いた朝顔、ひまわりや野菜が青空にむかってぐんぐん成長しはじめている季節でした。そんな園庭で、Sくんの保護者が話しをしてくれました。
「昨日、幼稚園から帰った途端、うちの子が冷蔵庫を開けて、『ごま!ごま!お母さん!ごまどこにあるの?ごまちょうだい!一粒でいいから~!!』と言うのです。
『何するの?』と言いながら、胡麻を渡すと大事そうに手のひらのせて、『この中に生命(いのち)がつまってるねん。この種を育てるねん。』と言いながら、プランターに植えたんです。昨日、幼稚園でなんかあったんですか?」という話でした。
幼稚園では、毎週月曜日に、特別礼拝日を子どもたちと守り、一週間の始まりを、礼拝を中心とした教育・保育日として過ごしています(特別礼拝:お祈り、聖書のお話、讃美歌)。Sくんが家で、胡麻の種まきをしたのは、その特別礼拝日のことでした。
その日の礼拝のお話が、『からし種』のお話だったのです。(からし種:新約聖書マルコによる福音書13章31節)
「からし種は、小さい種なんだよ。どんな小さな種よりも小さいのに、成長すると鳥が来て枝に巣を作るほどの木になるんだよ。小さな種の中に大きくなる『生きる力』がたくさんつまっているんだよ。」というお話でした。その時に、「どれくらい小さい種なの?」と子どもたちの質問があり、「胡麻くらい」との話もしました。
子どもたちの心のなかは、私たちの想像以上の躍動があります。お話を聞いたSくんの小さな心が動かされたのでしょう。小さな種の中にある目に見えない力のすごさを感じ、自分も育てたい!と心が生命(いのち)の力強さと喜びに満たされたのではないでしょうか。
子どもは、大人のように頭で考えて理解するのではなく、純粋な関心に導かれ、その繰り返しの経験の中で自分づくりをしていきます。大人とはちがった感動体験を自分の生きる力に変えていきます。
豊中愛光幼稚園は、2015年2月に90周年の記念礼拝と祝会をし、2015年4月には92年目を迎えました。2014年4月から幼稚園に保育園を併設するかたちで、0歳児から5歳児までのから教育と保育をおこなう園づくりを始め、今年4月からは、幼稚園でも、保育園でもなく、両方の機能をあわせ持った幼保連携型認定こども園として『豊中愛光幼稚園』の歩みを始めました。
現在、溢れる可能性を持った子どもたち101名と保護者、保育教諭・職員が豊中愛光幼稚園に集まって園生活を送っています。
出会いに感謝して、神さまの前に、謙虚な思いで共に育っていきたいものです。
ごまを育てることを否定されずに、水やりすること等をお母さんに見守られながら、目が出てくることを楽しみにしていたSくん。しかし、芽が出ることはありませんでした。でも、そこからがまた素敵です。どうして芽が出ないのか?と考えて、自分で答えを出していきます。
大人が先に答えを出してしまうのではなく、見守ること、共に考える姿勢、必要な環境を用意することが大切なのですね。